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こしみず・せいいち1949年9月16日生まれ、58歳。山梨県出身。73年、サントリー入社。99年からブレンダー室チーフブレンダー。ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)最高賞を2年連続受賞した「響30年」をはじめ、「山崎50年」「白州25年」などの開発に携わった。2004年には日本人で初めてISC審査員に選ばれた。 さながら理科の実験室。居並ぶ300種のウイスキーの原酒。琥珀の色の濃いの薄いの、個性はさまざま。水、大麦、仕込み、発酵、12種のポットスチル(蒸留釜)による初留、再留、5種の樽による熟成。同種の樽でも焼きの入り方や熟成環境で、同じ個性のモルトが生まれるとはかぎらない。隣同士の樽でも、まったく味が違うことがある。 大阪府島本町、サントリー山崎蒸留所。1923年に作られた日本のウイスキーのふるさと。ブレンダー室は、そのさまざまな個性のハーモニーを決定づけるところ。チーフブレンダー、輿水精一が、ひとつひとつのガラスのふたをずらし、鼻をかざす。 「フルーティー」 「ドライフルーツ」 「スモーキー」 「線香」 「硝煙。これはかなり暴れん坊だ」 慈父の目。それぞれの個性をむき出しにしたモルトが、かわいくて仕方がないようにみえる。 「熟成を経て、この状態まで10年から20年かかっている。一番個性がばらける時期でもあるんです」 人の一生にも似る。どの個性同士を組み合わせればどんなハーモニーが生まれるか。または、けんかさせれば。「優等生ばかりではおもしろくない。味に幅と奥行きが出ないんです」。やんちゃな生徒を抱えた教師のクラス運営のようでもある。 【1年ごとに味が進化】 輿水は自らの仕事を絵描きに例えた。カンバスに、さまざまな絵の具をのせて1枚の絵を完成させる。オーケストラの指揮者にも似るが、結果が瞬時に出るところが画家に近い。 熟練の記憶が、あらゆる個性をつかみ、組み合わせの結果を予想する。それでも期待を裏切り、予想外の好結果を生むこともある。 「だから、おもしろいんです」 記者の父は、毎晩、晩酌にオールドを飲んでいた。たまにいたずらになめさせてくれた。ある日、もらいもののロイヤルを一緒に飲んだ。世の中にこんなにうまい飲み物があるのか、と思った。長じて初めて自分で買った酒はホワイト。行きつけの飲み屋ができ、少し背伸びして初めてキープしたボトルは角だった。 「たとえばオールドを、いま飲んでください。当時よりおいしくなっているはずですよ」 チーフブレンダーの仕事は大きく2つある。新商品の開発と、既製品のリファイン。従来の個性を維持しながら微調整を加えるリファインは1年に1回。生まれて70年の角なら、70回味が進化してきたことになる。 仕込みから10年、20年。自然につむがれ、これほど時間と手間のかかった素敵な酒もない。もっと飲まれていい。 「作り手が、ウイスキーの持っている魅力を伝えきれていないんじゃないか、とも思うんです」 【ぐらすの中には…】 夕刊フジも来年2月、創刊40周年を迎える。「人間を描く」という原点をベースにリファインを続けてきたつもりだ。この間、サントリーと組んで長く続いた「ぴいぷる・いん・ぐらす」という企画があった。月に一度、話題の人とウイスキーを飲み交わす。255人のビッグネームが登場した。終始変わらなかった前文の文句を最後に。 ぐらすの中には何がある? ぐらすの中には酒がある。酒の中には何がある? 酒の中には人生が………ところで、ダンナ、今夜は何を? |
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